グリーンブック
2018 米
今年もアカデミー賞の時期ですが、
2019受賞作を今さら。
黒人のピアニスト、ドク・シャーリーが
差別の残る南部を演奏旅行することになった。
運転手として「トラブル解決能力」の高いトニーが選ばれた。
黒人への差別意識のあったトニーだが、
ドクの演奏への驚嘆もあって意識を改め、
ドクはドクで、トニーの乱暴だがまっすぐな性根が気に入り、
二人は次第に打ち解けていく。
基本的に大きな出来事はないストーリー。
最後の公演でイレギュラーが起こるもののある種完全な予定調和。
逆に言えば伏線はほぼ回収されておりストレスのない良作です。
実話がベースで、トニーはその後俳優デビューというのも驚き。
いい話を選んできましたね。
一方、黒人差別を描いた作品としては不満も上がっているようです。
・また「白人の救世主」(白人が黒人の救い主になる→ご都合)か
・特殊なエリート黒人で差別の実態と離れている
・予定調和すぎて新たなものがない
でもどうでしょう。
僕は社会派映画も好きですが、
そもそもそんなものは一切見ない、という人も多いですよね。
楽しくなれない映画、
活力のもらえない映画は見たくないという人も知っています。
そういう人にでも、誰にでも自信を持って薦められる映画、
その中で、差別についても知ることができる。
そうした映画ができたということで個人的には素晴らしいと思います。
この映画を見た日は少し気分が落ち込んでいたのですが、
前向きな気持ちになりました。
万引き家族
2018 日
話題作を今さら鑑賞。
監督は年金不正受給の事件からインスピレーションを受けたらしいが、
本作はそれだけにとどまらず、
日本社会から切り捨てられた弱者の叫びを詰め込んだような内容になっている。
樹木希林演じるばあちゃんの家に集う家族。
彼らは自らの行い(万引き、JKリフレなど法律やモラルに反するもの)を
いわば報われない社会への反発として、当然のものとしてこなしているが、
事物の判断ができるようになってきた少年にとっては、
受け入れられるものではなくなってしまった。
弱者のよりどころでもあったコミュニティだが、
誘拐の件も含めて、安藤サクラが言うようにもともと無理があったのだ。
ただ、この「家族」で過ごした時間は
参加者皆にとって幸せで有意義なものだった。
虐待されていた少女、車中で放置され死にそうだった少年、
子供が欲しかったカップル、
行き場と家族の愛のない少女、孤独死一直線の老婆。
映画の結末では基本的にどの問題も解決はされておらず、
明確に幸福になった人物はいない。
ラストの少女は何を見ているのか。
彼女は自分の選択ができるまで、無事生き抜くことができるのか。
「兄」は自分で運命を掴みなんとかなるだろうと十分確信できたが、
彼女もそうなって欲しいものだと思った。
安藤サクラはさすがの演技力。
要するにみんなうまい。
ドラマなどによくある、わざとらしい、白々しい演技をする人が誰もいない。
「誰も知らない」で日本の社会問題を告発した監督だが、
その進化版として日本映画史に残るような作品を作ったように感じる。
更新半年ぶりになってしまいました。。
いい作品を見ると活力も生まれるので、
もっと見るようにしなければ、と反省。
スターリンの葬送狂騒曲
2017 仏 英 ベルギー カナダ
1953年、スターリンが急死。
後継者は指名されていなかったため、
腹心のマレンコフらは権力を巡って策謀を巡らせるのだが・・・
ブラックコメディーということで、
目にした時にかなり期待した映画。
最初はコメディー要素が意図的に入れられていましたね。
ところが後半になるにつれ、
純粋な史実(なのではないか)という感じも強まり、
「思ったほどは面白くなかったかな」と思ってしまいました。
いや序盤のコメディータッチは少しくどい感もしていたので
バランスも大事と思うし、別に最後まで悪くはないんですよ。
期待が大きすぎたからかな・・・
「チャップリンの独裁者」みたいに、
架空の国でパロディ調にした方がもっと良かったのかもしれません。
惜しいなあという印象です。