海炭市叙景

2010 日


芥川賞5回候補になりながら、
売れることなく自殺した佐藤泰志の未完の絶筆を映画化。

短編集なので5編のオムニバスです。


海炭市という架空の町だが、自身の出身函館市を舞台としている。

11年ぶりに故郷に戻り
変わっていく町の形を残したいとかいうのもあったらしいとか、

舞台は冬~春なんだけどほんとは夏や秋も書きたかったとか。

夏も読んでみたかった。


廃れていく町の閉塞感、市井に生きる人たちの哀しさ、

そういったものをリアルに描き出している。

 

冒頭の作品だけ書けば、造船所をリストラされた兄と妹が主人公。

若い二人は手持ちわずかな小銭だけで函館山に登る。

帰り「ロープウェイ代がもったいない」と妹だけを乗せる兄。

妹は、ロープウェイの駅でひたすら待つが、兄はいつまでも現れない。

 

重苦しい話ばかりの2時間半なのに、引き込まれるものがある。

市電や朝市、函館山など函館の名所が出てきます。

 

今年公開された「そこのみにて光り輝く」もこの作家の原作です。

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