アンナ・カレーニナ

 

トルストイの有名小説を映画化。

いくつも映画になってますが、ロシア版。

おそらく1967年版だったと思います。


「幸福な家庭はどこも似たようなものだが、不幸な家庭はさまざまである。」

という有名な一文で始まる大部の小説。

木村浩訳の小説とは登場人物の発音(カタカナ訳)が少し違う。


ロシアを代表する官僚カレーニンの妻であるアンナ。

駅で出会った美青年将校ヴロンスキーと惹かれあう。

 

まあこのへんはみんな知ってる話です。

つまらない夫を捨てて道ならぬ恋へ。
そして情夫に依存しすぎて呆れられ、自殺に至ります。


映画ではあまり出てきませんが、この物語の主役はリョーヴィン。
とても実直な人柄で、田舎に領地を持っています。

農奴解放の進むロシアで、自分は農民から搾取するだけでいいのか、
宗教とはなにか、どう生きたらよいのか、と思い悩みます。


トルストイは実生活でリョーヴィンと同様の悩みを抱えており、

妻に、「そんなこと言ったら生活できないじゃないの!」
(搾取していいのかな?とかトルストイが言うのに対し)

と怒られたりしています。

トルストイの分身ともいわれるキャラ。

個人的にアンナは正直どうかと思うけど、
リョーヴィンはとても好き。

 

以下人物紹介


・カレーニン

アンナの夫。

「ロシアであなたを知らない人はいませんよ」

超有力官僚であるカレーニンは堅物で、保守的です。
また、甲高い声でうっとうしい話を述べる面があり、
アンナは辟易しています。

 

子供にも割と無関心。仕事が第一という印象です。
まあ当時(19世紀)のロシアは欧州と比べ後進国であり、
色々大変だったのでしょうが。

 

しかし寛容な面もあり、自分の体面さえ守れるなら
外で浮気しても構わない、とも言うし、
暴力や乱暴な言葉は一切使わないし、所得も地位も最高クラス。

体面重視でつまらない人物といえばそうなんですが、

「亭主元気で留守がいい」からすれば理想的ともいえるのでは?
という気もします。

 

そういうキャラじゃないのでヴロンスキー(アンナの浮気相手のイケメン)
と違い情熱的なことは言いませんが、
アンナに対し愛情がないわけでも無いようです。


・ヴロンスキー

青年将校である彼は、モテモテです。
リョーヴィンが片思いしているキチイも彼に夢中ですが、

駅であったアンナに猛烈なアタックをかけます。

 

その後もアンナと一緒にいて愛情はありますが、
全てを投げうって自分といてほしいアンナの態度にうんざりしてきます。

彼は将校で軍の仕事が多少あり、その他一応やるべき仕事

(今の定職とはイメージ違うけど。
彼も貴族の一家ではあるので、地方議会の評議員、とか)

もあり、カレーニンと違ってお金がなく金策が必要だったり、
その他母親と会ったりとか普通の用事もしたい。

そのたびに「私なんてどうでもいいのね」と言われてうんざりしてくる。
自分が誘ったために彼女をそういう境遇にしたわけで、
責任を果たそうとはしていましたが・・・

 

オヴロンスキーの後押しもあり、

一応キチイの結婚相手の候補的な立場にいるものの、

本人は入れあげられて困惑しているという感じ。

まあジゴロ的なキャラが、うぶな御嬢さんに惚れられて
俺は別にあんたと結婚する気とかないんだけどね、
うーんという感じでしょうか。

舞踏会でもわりとキチイにつれないです。


・オブロンスキー

遊び人で、子供の家庭教師に手を出したため妻ドリイと離婚の危機に。
その危機の状況が小説の冒頭。

遊び人でとても軽いが、人気者ではあり人脈が広い。

オブロンスキーの妹アンナはその仲裁のためにモスクワにやってきて、
ヴロンスキーと出会いました。

 

・リョーヴィン

田舎に土地を持つ領主。オブロンスキーの友人。
オブロンスキーの妻ドリイの妹キチイに恋している。

ただしキチイはイケメンのヴロンスキーに夢中。
頑張って告白したものの、「あなたなんてどうでもいいです」

という態度を目の前でとられるかわいそうな人。

その後いろいろあってキチイと結婚します。
でもメインは上に書いたようにトルストイの分身。

真面目で、色々なことを考えている。


・キチイ

若く美しい女性。「少女を脱する時期」みたいなことを
アンナに言われており設定はおそらく20才前後か。

イケメンのヴロンスキーにぞっこんであり、
地味で真面目なリョーヴィンなんて歯牙にもかけていない。

「(以前告白した)あの時の返事を・・・」

とスケートしながらリョーヴィンに聞かれたが、

聞かれた瞬間彼から離れ、「え、そんな話・・・」

と言って去っていく。(映画の描写)

さすがに失礼すぎだろうが!!


ヴロンスキーを取られたのでアンナのことが嫌い。

ショックで体調を崩し、修道院に療養に行くが、
そこで出会った献身的な女性の価値観に触れ、成長していく。

まだまだ若いので登場時はわりと幼稚ですかね。

映画の役はとても美人。すごい美人。やばいです。

ちょっと定かではないんですが、

アナスタシャ・ヴェルティンスカヤでしょうか。

 

・アンナ

最初は「いけないわ」とヴロンスキーをなだめていたが、
徐々に燃え上がりすごいことに。

ただ息子への愛もとても強く、
自分の不倫で別居に至っているので自業自得なのだが、
息子とも暮らしたい、ヴロンスキーとも暮らしたい、

「その二つの望みがかなわなければ生きてはいけない!」

と言ってます。

 

自宅(カレーニンの家)にヴロンスキー呼んで浮気したり、
ヴロンスキーの子供まで産んでるので、

社交界ではつまはじきにされてしまいます。

また当然夫のカレーニンはいい笑いものになります。
カレーニンはそれが嫌だから、

「浮気はせめて外で、公の目につかないようにやれよ」

と言っているのに。

 

他にもみんなが見ている前で、

「夫(カレーニン)はどうでもいいです
私はヴロンスキー命です」的な行動をどんどんとっていく。


で、すべてを捨ててヴロンスキーのもとに来たのに、
彼はすべてを捨ててくれない。

親も大事にすれば、仕事も金策も人付き合いも普通にやろうとする。

「貴方が情熱的に誘うから、
ここまで何もかも捨てたんじゃないの!」

という憤りが彼女にはある。

 

5日も6日も地方議会

(ロシアは恐ろしく広いので、多少の遠出となると
馬車で急いでも往復それくらいはかかる)

に行って、○日はお母様との用事?

私との旅行は○日の翌日に行こうですって!?
私はそんな優先順位なわけ!なんなの!!


一方、他方のよりどころである、息子について。


夫だったカレーニンは

アンナが(ヴロンスキーの子供を)出産の際、
うわごとで夫を褒めたのに感じ入り

(これ、出産もカレーニン邸でしてるんですよね。
不倫相手の子供ですよ?すごいことだよなと思うんですが・・・)

一度は許してくれたものの、

許す際、「もうお引き取りください」と
ヴロンスキーに精算を求め、彼も一応納得。

 

ところが、みな一応納得したはずなのにそれを無視され、

(ヴロンスキーも青年で幼稚であり、拳銃自殺を図ったのが原因。
まあそんなことされたら再燃するのもやむなしか・・・好きにしてください)

その後アンナとヴロンスキー二人だけで

長期イタリア旅行に行ったりして
(向こうの休暇は長いので月単位)関係再燃。

 

よってカレーニンはさらにこけにされたため、

わりと当然ながらもはや息子には会わせてくれなくなった。


こんな事情の中、アンナは絶望して自殺します。


彼女は聡明な女性と設定されてますが
いったいなにが聡明なのかよくわからないです。

まあ、聡明なはずなのに恋に溺れて身を滅ぼしてしまった、

ということなんでしょうね。

 

子供かわいいとか言ってますが、

例えば不倫旅行の間は子供はほったらかしですし

事情から四六時中一緒にいてよという気持ちは多少はわかるにせよ
ヴロンスキーは真面目なカレーニンと違って遊び人なので
借金してたりして財産的にアンナと遊んで暮らせるほどの余裕は全くありませんし
親との用事いれたことに対し子供じみた癇癪おこされてもね。

うーん。

 

風と共に去りぬ」のスカーレットも
あまり男性の共感はないかなと思いますが似たところがあるかな。

しかも若くて自己中で幼くてもまだわかるスカーレットと違って
アンナはどう見ても30代ですからね。

女たらしのヴロンスキーが一番悪いっちゃ悪いんだけど。


まあこの話の主人公は彼女でなくてリョーヴィン君です。

君とかいてるけど30代半ばかもしれませんね。
農民たちと一緒に収穫とかしてる好人物です。

 

登場キャラは社交界の人たち筆頭に
あまり友達になりたくない人も多いですが、
彼とは友達になりたい。

 

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