独裁者と小さな孫

2014 グルジア=仏=英=独

 

モフセン・マフマルバフ監督の久々の作品。

「パンと植木鉢」しか見ていないが、イランの巨匠です。

 

とある国の大統領府で孫と戯れる大統領。

「この窓から見える明かりを電話一本ですべて消せる」

目を輝かせ、無邪気に遊ぶ孫だったが・・・

 

 

 

 

空港で引き返したのは孫のためというより

自分の築いた体制はおそらくまだ大丈夫だと油断したのだろう。

しかし結局最側近を除いて全てに裏切られてしまうというところに

武田家滅亡時のような人間心理を感じた。

 

そして逃亡劇に移り、巧みな手管で生き延びる大統領に対し、

世間知らずの少年はどこまでいっても純粋なまま。

仕方がないよねと思いつつも結構イライラする(笑)

 

いい加減少しは状況を理解してもよさそうなものだが、

まああくまで無知なままの方が演出的に良いとは思う。

 

逃亡時の様々なエピソードにより

独裁者を殺せばすべて解決ではない、という強いメッセージが伝わってくる。

現状のイラクリビアなども果たして独裁時と比べ改善されているのか・・・

 

結末を見せないのはぜひ考えて欲しいというメッセージだろう。

寓話風の演出でこれだけストレートな社会派映画を作る手腕はさすが。