ちはやふる -結び-

2017 日

 

競技かるたを題材にした漫画の映画化。

上の句・下の句に続いての三部作完結編。

相変わらず原作は未読です。

 

下の句ではたしか団体戦の描写が減少していたので

少しいまいちだった記憶が。

 

しかし本作では団体戦メイン、むしろそればかり、

という展開になり王道部活青春もの路線が復活。

 

やはり団体戦は熱いです。

 

違うんだよ、個人戦×5じゃないんだよ。

競技は違えど懐かしい気持ちになりました。

 

他には、一気に高3ということで受験の描写(おいおい、理三かよ)や

一応三角関係の描写などもそこそこ。

原作はどうなっているのかわからないけど、

あまり掘り下げられてはいないですね。

 

だいぶ展開が端折られているんでしょうか

いきなり教師を目指したあたりは唐突は唐突ですが、

最後綺麗にまとまったのでいい終わり方だったと思います。

 

豪華キャストでキャラの魅力と華やかな和服、

熱い団体戦、という青春映画シリーズですね。

昔を思い出したこともあり、たまにはこういう路線も良かったです。

 

カメラを止めるな!

2017 日

 

昨年一といってもいい話題作。

 

今更ながら、ついに地上波で放映されたので鑑賞。

 

うん、内田けんじ系ですね。

ということで以下ネタバレ注意です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭、長回しで撮影されるゾンビ映画

ゾンビ映画はほとんど見ることがないため、

ジャンルとしてのクオリティーはあまり判断できないのだが、

どうもおかしいところが幾つも見て取れる。

 

変なやりとりして中だるみしてるし、

なぜか座ってるだけの奴がいきなり外に出たがるなど、

展開も明らかに不自然だし・・・

最後もこの終わり方はなんなんだ?

でもまあ勢いはあったしつまらなくはなかったかもね。

 

というところで時は1か月前に戻る。

実はこの撮影の舞台裏では・・・というストーリー。

 

TV鑑賞のため見返せていないのだが、

内田けんじ作品でやや感じる「どうですか、この脚本」という匂いや、

改めて見返さないとわからないところはなく、

「あ、この伏線回収した!」

「あそこで様子がおかしかったのはこういう理由だったのか」

と素直に感じさせてくれ、楽しませてくれる。

 

主人公の恋人はいつゾンビ化したのか不明だが、

まあ当初の(作品内の)脚本ではちゃんと話があったのだろう。

 

役者に合わせあて書きしたというだけあって、

俳優と登場人物はよくマッチしていたし、

プロデューサーが組体操をやらされていたところも◎。

 

その他、演劇といえば小学校の学芸会くらいしか経験がないので、

映画の舞台裏、演出や小道具なども個人的にはなかなか面白かった。

 

感想などを拝見すると最後の最後のエンドロールを称賛している方も多い。

個人的に気になった点としては、

そこに脚立が出てきていた気がするものの、

何を意味しているのか明確にわかっていないので

またそのうちに見返したいと思います。

(ラストシーンを実際は脚立で撮影したということ?)

 

家族ものの温かみ、絆という点に関しては

自分としてはさほど印象には残らなかったかな。

監督が自室で泣いてたのと、酒飲みのおじさんエピソードの伏線回収ですよね。

もちろん、そういう要素もあったことはわかるけど。

 

みなさん観終わったあといい気分になれるエンターテインメント映画ですね。

こうした映画が多くの人の目に触れて良かったと思います。

 

そしてなぜかわからないが「丹下左膳余話 100万両の壷」を思い出してしまった。

また借りてこようかな。

 

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

2017 米

 

フロリダのディズニーランド近くの安モーテルで暮らす少女が主人公。

楽しい夏休み、冒険がいっぱい。

 

カラフルな夢の国の街並みで夏休みにはしゃぐ彼女と友人たちの描写を通し、

彼女の意識していない現実が少しずつ観客に伝わってくる。

 

モーテル暮らし、言葉遣い、悪質ないたずら、それを悪いとも思わない親、

日々の食事、親の仕事、など・・・

 

主人公の母親役の女性は監督がインスタグラムを見て

映画のモデルとして選んだ女性で、適役がおらず、

結局実際に出演することになったとか。

 

娘への愛情はある一方、反省がない、改善がない、と批判もある母親。

では、あの状況で何をしたら良かったのかということも考えてしまう。

結局、人へのまともな対応ができなければ

どこで働いても上手くいかなかったのかもしれませんが・・・

 

愁いを帯びた、実は優しい管理人の名演が光る。

悪ガキとはいえ子どもに愛情も持っていて不審者もすぐ追い払い、

行き場のない人達を少しでもなんとかしてあげたい。

しかし、管理人に過ぎない彼は、踏み込めない限界も理解している。

また、彼の家族にも事情がありそう。だから優しいのかなとも思わせる。

 

ところでこの人、どこかで見たことあると思ったら

「グランド・ブタペスト・ホテル」の殺し屋役かよ・・・

また印象が全然違いますね。

 

サブプライムローンの影響があってここにやってきた人もいたのかもしれない。

そもそもそれ以下の境遇の人たちなのかもしれない。

現代アメリカの闇を、子供視点からさほど深刻にならず見つめられる映画。

それでも鑑賞後はやや暗いものが残ってしまったが。

 

ラストはある意味丸投げに終わっていて賛否両論かもしれない。

個人的にはあえてその後を書かないあの結末は悪くなかったと思っている。

 

余談

・「フロリダ・プロジェクト」とは

ディズニー・ランドの計画段階での呼び名だった。

・「プロジェクト」とはアメリカで、低所得層向けの公共住宅を指すらしい。

 

ファントム・スレッド

2017 米

 

ポール・トーマス・アンダーソン監督。

とはいえ不勉強でこれまで全く見たことがない。

 

この映画、以前映画評で見た際に

「恐ろしい話」というニュアンスで紹介されていました。

 

ところがラブロマンスというシールが貼ってあるし、

見始めると確かにそういう感じみたいだし、どういうことなのか・・・

 

だんだんわかってきましたね。

主人公レイノルズは、母親を追慕する完璧主義で神経質、我儘な男。

女は自分のドレスの引き立て役にすぎないが、

意識せずとも、母の代わりを探している。

 

朴訥な感じもするアルマは田舎のホテルでウェイトレスをやっている。

華やかな世界に連れてこられ彼のいいなりに従うも、不満が募り始める。

ある日、ペースを乱されることを極端に嫌うレイノルズに対し、

サプライズを企画する。

 

これまでそんな女は追い出していたレイノルズ。

ところが今回は踏みとどまる。

やはり「完璧なモデル」としてのアルマに未練があったのでしょうか・・・。

 

またいつも寄り添う姉の存在がなかなか味を出している。

弟のことを全て把握し、いつか母の代わりが現れないか、と願っているのではないか。

そんな感じがしました。

 

ともあれ、そのあたりから流れが変わり始める。

主導権を取るべく画策するアルマは、

疲れている時の彼が無邪気に甘え、優しい態度を取ることに目を付け、

毒キノコを摂取させる。案の定、レイノルズは体調を崩し、ほくそ笑む彼女。

 

一方、レイノルズにとっても、無力に陥り看護されることは快感であり、

アルマの中に失われた母性を見て取るのであった。

 

その後倒錯した関係はどんどん進んで行き、

前は粉末だった毒キノコをぶつ切り、

しかも彼の嫌いなバターでこってり味付けして供するところまで彼女の主権が強まる。

そしてそれを喜んで受け入れるレイノルズと、

「死ぬことは多分ないわよ」と怪しく笑うアルマ。

もはや、自分の世界を乱された、と文句を言うなど考えられない。

 

凄いことになりましたね。

 

自分の世界を相手にも差し出さないと、

結婚は成り立たないんだろうけど、ここまでは・・・。

ということで冒頭に戻ってよくわかりました。

 

そんな二人の関係をずっと見守っている姉も凄いなと思いますが。

何もかも分かったうえでなんじゃないのか?

いや、これはこれで恐ろしいね。姉弟愛なのかな。。