ダラス・バイヤーズクラブ
2013 米
実話の映画化。
1985年、電気技師のロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)は自由奔放。
ロデオの賭けの胴元になり、負けても金を持ち逃げ。
女も生きがいで娼婦を呼びまくり。
テキサスの典型保守で、ゲイを口汚く罵る。
そんなしょうもない彼だったが、ある日HIVに感染していることを告げられる。
当時、HIVの感染源は主に同性間性交渉と思われており、
最初はありえねぇと高をくくっていたロンだったが・・・
次第に不安になり図書館で書物に没頭。
新薬が出たと聞けば入手を試み、それが無理とわかるとメキシコまで足を延ばす。
周囲からはホモ野郎と蔑まれ、嫌がらせをされるも一直線に生を求めていく。
出会ったメキシコの医師は副作用も多く、効果も完全ではない新薬を否定し、
ビタミン治療などで免疫力を向上させるなど、独自の治療を試みる。
ロンはテキサスに戻り、世界中に飛んでその他の効果的な薬を探しながら、
HIV感染者に薬をさばくクラブを立ち上げるのだった・・・
自己中男が現実を受け入れ、性同一性障害の相棒レイヨンとも出会い、
自らの治療法を探すうちに思いついた当初の金儲けが
純粋に患者の選択肢を求める社会的な運動へとつながっていく。
(他にも同様の組織があったらしい旨、言及されてはいる)
作中で製薬会社から医者が金をちらつかされ治験を始めた
(このシーンはノバルティスの事件を思い出させられた。)
AZTという新薬はかなり悪者になっているが、実際効果がどの程度あったのか、
副作用の重篤さなど詳しくはわからない。
ただ、それ以外の薬はなんだろうと承認しない閉鎖的な医薬界への問題提起、
そうしたメインストリームに乗らない医師からの治療法の主張、
規制に目をつぶりロンに買収され協力する一部医師の存在。
同じく治療法のなかったアルツハイマーに効くんじゃないかと
ロンの薬を試す友人警官。
一人の男の行動からいろいろな場面が描き出され、
なかなか力のこもった作品だった。
患者役のためかなりの減量をして挑み、
アカデミー主演・助演男優賞、ゴールデングローブ賞主演・助演男優賞を受賞。
ロンは最後まで規制や権力にかみつき破天荒なため
テーマの割にしんみりした感じはあまりない。
余命30日と宣告された男が何日間生きたのか、
その答えは映画のラストにあった。