スリー・ビルボード
2017 米=英
田舎町の片隅に立つ3枚の広告看板。
長年放置され見るものもなかったが、ある広告が出されることに。
その内容を巡って町は紛糾し、
ある者は激怒し、ある者は忸怩たる思いを抱え、
ある者は吐き出しどころの無い憤懣と自責に苛まれ続けるのだが・・・
もう少し前の映画なのでご存知の方も多いかもしれませんが、
サスペンス仕立てであり観客の予想を裏切る物語が続きながら、
映画の本質は葛藤と他者理解にあるというなかなか中身の濃い映画です。
主人公(広告主)は奔放な娘に手を焼いた挙句
ある事件の引き金とも言える暴言を吐いてしまう。
我儘な娘もどうかとは思うのだが、母親としてはその点をずっと引きずってしまい
自責の念に駆られるのはやむを得ないところ。
この部分は最近だと「マンチェスター・バイ・ザ・シー」が徹底して描いていました。
もっともあちらは犯人や警察という直接的な対象がいないため
ひたすら抱え込む羽目になって外向きのエネルギーはありません。
ところが彼女の外向きのエネルギーは凄まじく、
邪魔する者はどんな手を使っても排除する確固たる意志があります。
警察署長は善良な人物で、それは主人公も否定しない。
彼が公然の秘密として末期癌に侵されていることが事態を難しいものにする。
しかし、彼の力をもってしても警官の暴力・差別はもう少し止められないのか?
という疑念はあるが・・・(野放しすぎでは?)
所長を慕う暴力警官。人生なかなか上手くいかずに来た彼は、
母親に似て差別主義者で直情的。
このあたりがトランプ大統領の支持層なのかな、という印象を受ける。
作中でもありえないような問題を引き起こすのだが、
そのあたりから対立ばかりで
観客をハラハラさせてきたこの映画(サスペンス的には〇)が
別方向に向かい始めます。
殺し合いを始めかねないような二人が突っ走り、自省し、
最後にどうなるのか、なかなか味わい深いと思います。