ありがとう、トニ・エルドマン
2016 独
ふざけるのが好きなヴィンフリートは、
今日も配達員をからかって楽しんでいた。
しかし、老いた母親と犬は、どちらも具合が悪そう。
久々にルーマニアから帰って来た娘は、電話で席を外してばかり。
人生、なかなか楽しめないこともあるもんだ。
その後、老犬の死をきっかけにルーマニアへと旅立ったヴィンフリート。
仕事人間の娘が気になり、
自らの悪ふざけ好きもあってちょっかいを出すも、
休日も仕事がらみで忙しい娘には基本的に相手にしてもらえず、
気をつかってあっさり帰国。
と思いきや・・・
迷惑なちょっかいを出され続けたはずが、
心になんとなくゆとりができる、そういう存在がいることの大切さ。
もっと言えば、そういう存在を受け入れられない状況の危なさ、
というほうがいいのかも。
国際企業がルーマニアで資源搾取をしている現実、
その片棒、というか汚れ役を担わされる娘の仕事、
そうした搾取側の一員として、
知らず知らず、客として尊大な態度を取るのが
普通になってしまっている娘。
などさりげないながら舞台背景として描かれている点は
どれほどのテーマなのかはわからず、
おそらく娘の転職にもあまり影響していない様子。
なかなか異色の映画でした。
マンチェスター・バイ・ザ・シー
2016 米
アカデミー主演男優賞・脚本賞受賞作。
ボストンで便利屋を営むリー(ケイシー・アフレック)。
淡々と暮らし、時折パブで暴れる以外に感情の発露はない。
(口汚いのは昔から。)
そんな彼の下に兄の危篤を告げる連絡が。
故郷の街「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
(そういう町の名前なんですね。凄い付け方)
に向かうリー。
兄の今際には間に合わず、
待っていたのは16歳の甥パトリックの後見人という大役だった。
冒頭から時折挿入される過去の映像。
やや軽薄ではあるが、明るく、パトリックとも親密だったリー。
それがどうして豹変してしまったのか。
その理由は作中で明かされるが、
彼の深い悲しみがしんしんと伝わってくる名作である。
結局その原因に関しては何一つ癒されることはないのであるが、
甥との交流により、僅かながらも人間性を持つことができるようになり、
映画は終わる。
マイナス点とすれば音楽の使い方が「これでもか」という印象であり、
このテーマの作品なら音楽も控えめで良かったと思う。
パトリックはやたらと奔放な生活を送っており共感できないが、
以前のリーがお調子者であったことを考えれば頷ける性格ではある。
船にこだわるあたりも幸せな思い出を忘れていないようで、なかなかいい。
体の弱い中、自分亡きあとの息子・弟のため、色々準備しておく兄。
地味にここに結構共感した。直接描写はあまりないのだけれど。
最後の結論には納得いかないところもあるが、
長尺にもかかわらず「もう終わってしまうのか」と思わされた貴重な作品。
楽しい作品ではないけれど、おススメ。
ブラッド・ファーザー
2016 仏
メル・ギブソン主演作。
アウトローの生活を長年送り、
いまはトレーラーハウスで刺青を彫っているジョン。
そんな彼の下に、音信不通の娘から連絡が。
居心地の悪い母親の元を離れ気ままに過ごしていた彼女だが、
無鉄砲さから危険な状態に置かれてしまっていた。
マフィアからも警察からも追われる彼女を助けるため
奮闘する父親のアウトロー術?が見どころ。
グラン・トリノの名前を出している人もいたように、
登場するバイクとか、失われた栄光のノスタルジーという意味では
優れている映画なのだろうか。
個人的にはグラン・トリノはあまり共感できないので
その点本作も微妙だった。
ヒロインはわりとかわいいが、行動が無謀すぎてどうかと思う。
というか登場人物はみんなそんな感じですが。
アクションはまあまあだが正直あえて見るほどではない感じ。
TVでやってて暇だったらありかもしれません。。