バーフバリ2 王の凱旋
2017 印
前作で途中で終わった回想シーンの続き。
前半はコミカルかつさわやかなお話。
バーフバリはあまりに好青年過ぎて、うざいくらいの白馬の騎士ぶりでさえ
許せてしまうキャラクター。男女問わず感情移入できるわけです。
さて、後半になり、主人公(父バーフバリ)は権謀術策にはまっていく。
ストーリー上、シヴァガミとの確執を生まないといけないとはいえ、
ちょっとヒロイン、発言がアホっぽいですけどね・・・。
その後、悲劇の回想が終わると残りは世代をまたいだ復讐シーンということで、
思ったよりは短めだったかな。悪役はなかなかいいキャラでしたが、
ラストで彼の父親は生きていたのが地味に意外なところ。
前後編、共に2時間超えながら全く飽きずに楽しめる娯楽作でした。
バーフバリ 伝説誕生
2015 印
インドで興行収入記録を達成したらしい話題作。
日本でもしばらく前に
一部でブームになっていたようだが今更鑑賞。
曰くありげな冒頭から、主人公バーフバリが成長し
超人ぶりを発揮して大活躍していき、なかなか楽しめる。
ところが、途中から回想シーンに入り、
若き父親バーフバリの活躍がメインになる。
そういう構成なのかぁ。
(子世代の)バーフバリの英雄譚のみの映画だと思っていたので結構意外だった。
ヒロインと期待していた美人、アヴァンティカの出番も
中盤以降ほとんど無かったし・・・。
(実質、映画のヒロインは過去のお母さんのようなもの)
このあたりで少し脱線すると、
個人的に、ミュージカル映画には少し苦手意識を持っている。
一方、インド映画につきものの歌と踊りのシーンは特に気にならない。
これはなぜなのかと今回意識したのが、
「インド映画では、歌と踊りのシーンでもストーリーが進行している」
ということだった。
普通のミュージカル映画の場合、歌と踊りそのものを見せたいから、
話を止めることが多い気がするんですよね。
そうすると映画を見てるのに邪魔されたような気がしてしまうというか。
まあ嫌なら見るな、という感じですが。
以上、何のオチもない勝手な考察でした。
話を戻して、ラストについては「え、ここで終わるの?」
とかなり消化不良になるため
「バーフバリ 王の凱旋」も用意して、続けての鑑賞をおススメします。
スリー・ビルボード
2017 米=英
田舎町の片隅に立つ3枚の広告看板。
長年放置され見るものもなかったが、ある広告が出されることに。
その内容を巡って町は紛糾し、
ある者は激怒し、ある者は忸怩たる思いを抱え、
ある者は吐き出しどころの無い憤懣と自責に苛まれ続けるのだが・・・
もう少し前の映画なのでご存知の方も多いかもしれませんが、
サスペンス仕立てであり観客の予想を裏切る物語が続きながら、
映画の本質は葛藤と他者理解にあるというなかなか中身の濃い映画です。
主人公(広告主)は奔放な娘に手を焼いた挙句
ある事件の引き金とも言える暴言を吐いてしまう。
我儘な娘もどうかとは思うのだが、母親としてはその点をずっと引きずってしまい
自責の念に駆られるのはやむを得ないところ。
この部分は最近だと「マンチェスター・バイ・ザ・シー」が徹底して描いていました。
もっともあちらは犯人や警察という直接的な対象がいないため
ひたすら抱え込む羽目になって外向きのエネルギーはありません。
ところが彼女の外向きのエネルギーは凄まじく、
邪魔する者はどんな手を使っても排除する確固たる意志があります。
警察署長は善良な人物で、それは主人公も否定しない。
彼が公然の秘密として末期癌に侵されていることが事態を難しいものにする。
しかし、彼の力をもってしても警官の暴力・差別はもう少し止められないのか?
という疑念はあるが・・・(野放しすぎでは?)
所長を慕う暴力警官。人生なかなか上手くいかずに来た彼は、
母親に似て差別主義者で直情的。
このあたりがトランプ大統領の支持層なのかな、という印象を受ける。
作中でもありえないような問題を引き起こすのだが、
そのあたりから対立ばかりで
観客をハラハラさせてきたこの映画(サスペンス的には〇)が
別方向に向かい始めます。
殺し合いを始めかねないような二人が突っ走り、自省し、
最後にどうなるのか、なかなか味わい深いと思います。
聲の形
2016 日
「君の名は」「この世界の片隅に」と並びチェックしていたアニメ作品。
レンタル開始後、地上波初放送まで見るのが遅れたのはやや失態。
テーマからわかっていたものの、思った以上に重い作品でした。
鑑賞時は別件で少しショックなこともあり、
しっかり整理して文章にするまでの気力がなく少し遅れて。
原作は未読です。やや説明不足と感じる部分もあったのと、
カットされたエピソードも結構あるようなので、読んでみてもいいのかも。
以下適当な人物紹介と感想など。
石田→小学生の時イジメをエスカレートさせ、
その結果周囲からはぶられ続けている。
自分に自信なし。生きている意味なしと思っている。
もう贖罪は済んでいるレベルだろうが、心の救済はこの作品を通して。
西宮→ヒロイン。聴覚障害で上手くコミュニケーションができないことを
引け目に感じており自己肯定感皆無。
その割に周りを読めず意欲的なところがあり(怪獣のバラードのシーンなど)、
悲劇のきっかけとなってしまう。いい子なのだが不安定。
映画の作中のみではバランスをやや理解しきれなかった。
原作は合唱のシーンがもっと長いようなので色々あったのだろう。
クライマックスも、石田は永束にさえも全ての心を開いているわけではないので
仮に関係が全て壊れたとしてもたいして責任を取る必要はないはずである。
(そもそも責任を取る必要もないのだが)
むしろ石田の文字通りの生きがいは彼女自身なのだが
本人に自己肯定感がないので、それを自覚できないでいた。
西宮妹→姉のことを第一に考える健気な子。しかし自分もトラブルを抱えている。
共感できるキャラは少ない作品なので人気と思われる。
母親との関係が悪いらしいがその描写は映画にはあまりない。
家出のシーンくらいか。妹が欲しくなる。
植田→スクールカースト上位系女子。昔から石田のことが好き。
思ったことははっきり言う性格。いわゆる「いい子」とは程遠いが、
個人的には素直なこの子が一番好き。
小6のクラス会?にでも
多少なり石田をかばってやっていれば
言うことはなかったがこの物語も成立していなかったであろう。
古き良き過去の象徴として
島田と和解させたければ単純に会わせるだけでは無理で、
自己の業(石田を見放し続けたこと)をもっと担って色々根回しすべきだった。
作画は正統派美少女。
川井→自分かわいさが強い、一番やっかいそうな女子。
こういう人と深く人間付き合いすると、自分を損なうのではないか。
苦手なタイプ。
佐原→小学校で不登校になった描写は映画にあったっけ?
特にコメントすることもない善良な人。
島田→小学生の時石田とつるんでいたが、今は積極的に彼を疎外している。
映画版では石田のイジメを諫めるようなシーンはなかった気がするので、 かなり手のひら返しな感じを受けた。ラストで語られた介入は唐突な印象。
永束→石田に唯一できた友人。石田のことをとても大切に思っている。
気持ちはわかる。自分に自信がないのでテンションは異なるが、
石田もそれなりに心を開き、彼に相談したりもしている。
真柴→原作では過去にイジメを受けていたらしいが、
映画では全く描写がないので、
石田の言うように「部外者のくせにうっとおしい奴」という感がある。
総じて、石田の感情の発露はむしろ自然な感じ、言われても比較的妥当な感じがして、
「好き勝手なことを言って友人が離れていった」というエピソードの理由づけが
そこまでではなかった。おそらく原作の方が説得力はあるのだろう。
アニメは綺麗です。
おまけ。地上波初放送ということは以前から知っていたが、
まさかEテレとは思わなかった。
内容はそれも頷ける、深く考えさせられる内容で、
夏休み明けの子供の自殺率が高いことを考えてのこの時期とも思われる。