万引き家族

2018 日

 

話題作を今さら鑑賞。

 

監督は年金不正受給の事件からインスピレーションを受けたらしいが、

本作はそれだけにとどまらず、

日本社会から切り捨てられた弱者の叫びを詰め込んだような内容になっている。

 

樹木希林演じるばあちゃんの家に集う家族。

彼らは自らの行い(万引き、JKリフレなど法律やモラルに反するもの)を

いわば報われない社会への反発として、当然のものとしてこなしているが、

事物の判断ができるようになってきた少年にとっては、

受け入れられるものではなくなってしまった。

 

弱者のよりどころでもあったコミュニティだが、

誘拐の件も含めて、安藤サクラが言うようにもともと無理があったのだ。

 

ただ、この「家族」で過ごした時間は

参加者皆にとって幸せで有意義なものだった。

虐待されていた少女、車中で放置され死にそうだった少年、

子供が欲しかったカップル、

行き場と家族の愛のない少女、孤独死一直線の老婆。

 

映画の結末では基本的にどの問題も解決はされておらず、

明確に幸福になった人物はいない。

 

ラストの少女は何を見ているのか。

彼女は自分の選択ができるまで、無事生き抜くことができるのか。

 

「兄」は自分で運命を掴みなんとかなるだろうと十分確信できたが、

 彼女もそうなって欲しいものだと思った。

 

安藤サクラはさすがの演技力。

他にも樹木希林リリーフランキーは当然として子役もうまく、

要するにみんなうまい。

ドラマなどによくある、わざとらしい、白々しい演技をする人が誰もいない。

 

「誰も知らない」で日本の社会問題を告発した監督だが、

その進化版として日本映画史に残るような作品を作ったように感じる。

 

 

更新半年ぶりになってしまいました。。

いい作品を見ると活力も生まれるので、

もっと見るようにしなければ、と反省。